産後の尿もれ・骨盤の痛みに|骨盤底筋×ピラティスの整え方【医師監修】

リフォーマーの上で骨盤を持ち上げるエクササイズをする女性

くしゃみをした瞬間、ヒヤッとする。産後しばらく経つのに、骨盤まわりの重だるさが抜けない。抱っこや立ち上がりのたびに、足の付け根が痛む——。

こうしたお悩みは、恥ずかしさから相談できないまま何年も過ごしてしまう方が少なくありません。実は40歳以上の女性の4割以上が、お腹に力が入ったときの尿もれ(腹圧性尿失禁)を経験しているという報告があります(日本泌尿器科学会)。決して珍しいことではないのです。

この記事では、産後の尿もれや骨盤の痛みに関わる「骨盤底筋(こつばんていきん)」について、研究データをもとに解説します。読み終えるころには、自分のケアをどこから始めればよいか、そしてどんなときに医療機関を受診すべきかがはっきりします。

意外に思われるかもしれませんが、骨盤底筋のトレーニングは、研究の世界では手術より前に試す「第一選択」として位置づけられています。

目次

この記事の要点

  • 骨盤底筋は、内臓を下から支える「ハンモック」のような筋肉。妊娠・出産で負担がかかり、ゆるみやすくなります
  • 骨盤底筋トレーニング(PFMT)は、腹圧性尿失禁に対する第一選択の保存療法とされています(国際的なレビュー・日本泌尿器科学会)
  • 国際的なレビューでは、トレーニング群の56%が「治った」と回答(何もしない群は6%)と報告されています
  • ピラティスは、2025年のメタ分析で骨盤底筋トレーニングと同等の効果が報告されています。ただし「骨盤底筋を意識して行うこと」が前提です
  • 産後の運動開始は医師の許可が原則。特に帝王切開の方は慎重に。血尿や強い痛みがある場合は運動より先に受診を

産後の尿もれや骨盤の痛みは、どれくらいの人が悩んでいる?

40歳以上の女性の4割以上が腹圧性尿失禁を経験し、週1回以上経験する女性は500万人以上と推計されています(日本泌尿器科学会)。 骨盤の痛みも同様に、産後長く続く方が一定数います。

骨盤帯痛(こつばんたいつう=骨盤まわりの痛み)について、スウェーデンの長期追跡研究では、産後12年が経過した時点でも回答者の40.3%が何らかの痛みを報告していました(Bergström et al., 2017)。多くの方は自然に軽くなりますが、そのまま続く一群が確かに存在するということです。

「産後だから仕方ない」「そのうち治る」と放置されやすい症状ですが、対処法が研究されている領域でもあります。

骨盤帯痛が長引きやすい方の特徴

システマティックレビューでは、産後まで痛みが続きやすい予測因子として次が挙げられています(Burani et al., 2023)。

  • 妊娠中の痛みが強かった
  • 妊娠前から腰痛があった
  • 妊娠中の日常生活の支障が大きかった
  • 痛みへの不安から動くことを避けていた(恐怖回避思考)

最後の項目は重要です。痛みを恐れて動かないことが、かえって回復を遅らせる可能性があることを示しています。

骨盤底筋とは?なぜ産後にゆるむの?

骨盤底筋は、骨盤の底で内臓を下から支えているハンモックのような筋肉群です。 尿道・膣・肛門を締める働きがあり、お腹に力が入ったときに尿もれを防ぐ役割を担っています。

この筋肉は単独で働いているわけではありません。横隔膜(呼吸の筋肉)・腹横筋(お腹の深層の筋肉)と連動して、お腹の中の圧力をコントロールしています。 息を吐きながらお腹を薄くすると骨盤底が引き上がる——という連動です。

産後にゆるみやすい理由

妊娠中は大きくなった子宮の重みが骨盤底に長期間かかり続け、出産時には産道として大きく引き伸ばされます。この物理的な負担が、筋肉の働きを一時的に低下させます。

なお「妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンで関節がゆるむから」という説明をよく見かけますが、研究の結果は一致していません。妊娠関連ホルモンと腰・骨盤の痛みの関連を調べたレビューでは、関連ありとする研究が4件、なしとする研究が5件と割れています(Daneau et al., 2021)。ホルモンだけで説明できるほど単純ではない、というのが現時点の正確な理解です。

尿もれがある方は「連動」が失われていることがある

通常は骨盤底筋が収縮すると腹横筋も自然に一緒に働きます。実験では、骨盤底筋を意識して締めると腹横筋の厚みの増加が49.7%から65.8%へ有意に大きくなったと報告されています(Critchley, 2002)。

ところが尿失禁のある女性では、この連動が失われている、あるいは変化していることがあるとされています(Bø et al., 2009)。つまり「腹筋運動をしているのに尿もれが変わらない」という方は、そもそも骨盤底筋のスイッチが入っていない可能性があるのです。

骨盤底筋トレーニングに効果はある?

あります。腹圧性尿失禁に対する「第一選択の保存療法」と位置づけられています。 日本泌尿器科学会も、軽症の腹圧性尿失禁は骨盤底筋訓練で改善が期待でき、手術の前に試す保存的療法だと説明しています。

その根拠となっているのが、31の研究・14か国・1,817名の女性を統合した国際的なレビューです(Cochrane Database of Systematic Reviews, 2018)。

指標トレーニング群何もしない群
腹圧性尿失禁が「治った」と回答56%6%
「治った・改善した」と回答74%11%
1日の尿もれ回数約1回減少

治癒の報告は約8倍(相対リスク8.38)という結果で、これは同レビューの中でも最も質の高いエビデンス(高品質)と評価されています。

安全性についても、このレビューで「有害事象はまれで、報告された場合も軽微」とされているほか、ピラティス等を含む14研究797名のレビューでも有害事象の報告はありませんでした(Hao et al., 2025)。

続ける期間の目安

実務上の目安は、1回8〜12回の収縮を1日3セット、数か月単位での継続です。数日で結果が出るものではなく、筋力トレーニングと同じで積み重ねが必要になります。

ここが最大のハードルです。「やり方が合っているか分からない」「一人だと続かない」という理由で中断してしまう方が非常に多いのが実情です。

ピラティスが骨盤底筋のケアに向いている理由

2025年のメタ分析では、ピラティスなどの運動は骨盤底筋トレーニングと同等の効果があり、何もしない場合より明確に優れていると報告されています(Hao et al., 2025, International Urogynecology Journal)。 14の研究・797名を統合した結果です。

さらに閉経後女性を対象とした12週間の比較試験でも、ピラティスと骨盤底筋トレーニングで腹圧性尿失禁の管理に差はなかったと報告されています(Gonzaga et al., 2024)。高齢女性を対象とした別の試験では、ピラティス群のほうが腹横筋の筋力で優位という結果も出ています(Dimli et al., 2024)。

ただし、大前提があります

これらの研究に共通する重要な条件は、「骨盤底筋の随意収縮(意識して締めること)を伴って行っている」という点です。

単に体幹を動かすだけのエクササイズでは、この効果は期待できません。実際、腹横筋のトレーニングだけで骨盤底筋トレーニングを代替できる根拠は不十分だとする指摘もあります(Bø et al., 2009)。

ピラティスは骨盤底筋トレーニングの「上位互換」ではなく、「意識して行えば同等に有効な選択肢」——これが研究から言える正確な位置づけです。

骨盤まわりの痛みにも

産後の腰・骨盤の痛みについては、37研究・3,769名を統合したレビューで、体幹を対象とした運動が痛みの強さ(10点満点で−2.21点)と日常生活の支障を有意に減らしたと報告されています(Ruchat et al., 2025, British Journal of Sports Medicine)。

慢性腰痛を対象としたネットワークメタ分析でも、ピラティスは通常のリハビリテーションより痛みの改善が優れていました(Li et al., 2023)。

ただし、運動が痛みの「発症そのもの」を防ぐかどうかは、はっきりしていません(Davenport et al., 2018)。すでにある痛みや不調をやわらげる方向で期待するのが、現時点での妥当な考え方です。

マシンを使う利点

なお、これらの研究は「ピラティス」全体を対象としたもので、マシン(リフォーマー)に限定した比較試験はまだ多くありません。そのうえで、マシンを使う実務上の利点は次の点にあります。

  • 産後で体力に自信がなくても、負荷を細かく調整できる
  • 仰向けなど腰に負担の少ない姿勢で行える
  • マシンが動きをガイドするため、間違ったクセが出にくい
  • 呼吸と骨盤底の連動を、講師がその場で確認しながら進められる

「骨盤底筋を締めているつもりで、実はお尻や太ももに力が入っている」というのは非常によくあることです。一人では確認しづらいこの部分こそ、マンツーマン指導の価値がある部分だと考えています。

👉 マシンとマットの違いはマシンピラティスとマットの違い|研究で解説で詳しく解説しています。

Studio NEXTEでの取り組み(長野市)

Studio NEXTE(スタジオ ネクステ)は、長野市三輪にある整形外科専門医監修のマシンピラティススタジオです。1階が整形外科(上野医院)、2階がスタジオという構造になっています。

産後や骨盤まわりに不安のある方には、次のような点を大切にしています。

項目内容
指導形式完全マンツーマン・完全予約制(人目を気にせず相談できます)
監修整形外科専門医が運動器の視点でプログラムを監修
相談体制1階が整形外科のため、身体の不安を相談しやすい環境
通い方月額なし・回数券制(30分=1回)。産後の予定に合わせやすい形です

尿もれや骨盤の悩みは、初回のカウンセリングで無理にお話しいただく必要はありません。 「骨盤まわりを整えたい」とだけお伝えいただければ、それに沿ってプログラムを組み立てます。

初回体験30分 ¥0(マシン含む)

体験のご予約・講師の紹介はこちら

自宅でできる基本の骨盤底筋トレーニング

まずご自宅で試せる基本の方法です。痛みがある場合は中止し、医療機関にご相談ください。

  1. 仰向けになり、両膝を立てます(腰の負担が少ない姿勢から始めます)
  2. 息を吸って、お腹をふくらませます
  3. 息を吐きながら、尿を我慢するように下腹部の奥をキュッと引き上げます(肛門・膣を身体の内側へ引き込むイメージ)
  4. その状態を5秒キープします。お尻・太もも・お腹の表面に力が入らないように注意します
  5. 力を抜いて10秒休みます
  6. これを8〜12回で1セット。1日3セットを目安に

ポイントは「締める」より「引き上げる」感覚です。呼吸を止めないこと、そして回数より正確さを優先してください。

慣れてきたら、座った姿勢・立った姿勢でも同じ感覚を再現できるか試してみましょう。日常生活で必要になるのは、まさにその姿勢だからです。

こんな場合は、運動より先に医療機関へ

自己判断で運動を始める前に、以下に当てはまる場合は必ず医師にご相談ください。

産後の方(米国産婦人科学会の指針より)

  • 帝王切開だった/分娩に合併症があった → 運動開始は医師の許可を得てから
  • 多量の出血が続いている
  • 発熱、悪臭のあるおりもの
  • ふくらはぎの痛み・腫れ(血栓のサインの可能性)
  • 強いめまい、持続する頭痛
  • 運動すると痛みが出る

尿の症状について

  • 血尿がある
  • 何かが下がってくる感じ(骨盤臓器脱の可能性)
  • 保存的なケアを続けても改善しない

骨盤・腰の痛みについて

  • 足のしびれや力の入りにくさが進行している
  • 排尿・排便のコントロールが難しくなっている
  • 原因不明の体重減少、発熱を伴う
  • 夜間にかけて痛みが強くなる

これらは運動で対応する段階ではなく、医学的な評価が必要なサインです。Studio NEXTEは整形外科専門医が監修し、提携クリニック(上野医院)と連携した体制を整えていますので、判断に迷う場合はご相談ください。

👉 腰の不安がある方は腰が不安な方こそピラティス|医師監修もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q1. 産後どれくらいから始められますか?
経腟分娩で合併症がなかった場合、産後数日から軽い運動を始められるとされています(米国産婦人科学会)。ただし帝王切開や分娩時に合併症があった方は、必ず医師の許可を得てから始めてください。マシンピラティスの開始時期についても、事前にご相談いただければ体調に合わせてご案内します。

Q2. 骨盤底筋トレーニングはどのくらいで効果が出ますか?
目安は1日3セットを数か月単位で継続することです。効果の感じ方には個人差があります。数週間で変化を感じる方もいれば、時間がかかる方もいます。

Q3. ピラティスだけやれば、骨盤底筋トレーニングは不要ですか?
いいえ。研究でピラティスが有効とされているのは、骨盤底筋を意識して収縮させながら行っている場合です。エクササイズの動きだけを行っても同じ効果は期待できません。当スタジオでは呼吸と骨盤底の連動を確認しながら進めます。

Q4. 出産経験がなくても関係ありますか?
あります。加齢や体重の増加、慢性的な咳、長時間の立ち仕事なども骨盤底に負担をかけます。40歳以降は女性の約半数に何らかの尿失禁があるとの報告もあり(日本女性心身医学会)、出産経験の有無にかかわらずケアの対象になります。

Q5. 子どもを連れて行けますか?予約は取りやすいですか?
完全予約制のマンツーマンです。お子さま連れのご希望やスケジュールについては、ご予約時にご相談ください。回数券制(30分=1回)のため、産後の変わりやすい予定にも合わせやすい形になっています。

Q6. 運動が苦手で、身体も硬いのですが大丈夫ですか?
問題ありません。マシンピラティスはスプリングが身体を補助するため、柔軟性や運動経験は必要ありません。むしろ「一人ではうまくできない」という方にこそ、マンツーマンでの確認が役立ちます。

まとめ

産後の尿もれや骨盤まわりの痛みは、我慢して過ごす方が多い一方で、対処法が研究されている領域です。

  • 骨盤底筋トレーニングは、腹圧性尿失禁に対する第一選択の保存療法
  • 国際的なレビューでは、トレーニング群の56%が治癒を報告(対照群6%)
  • ピラティスは骨盤底筋を意識して行えば、同等に有効な選択肢
  • ただし産後の運動開始は医師の許可が原則。気になる症状があれば受診が先

大切なのは、正しい場所に力が入っているかを確認しながら続けることです。それが一人では難しいからこそ、専門家と一緒に行う意味があります。

Studio NEXTE(長野市三輪・上野医院ビル2F)は、整形外科専門医監修のもと、完全マンツーマンでお身体に合わせたプログラムをご提案しています。

初回体験30分 ¥0(マシン含む)

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関連ページ

監修: Studio NEXTE 監修医/上野医院 院長(日本整形外科学会認定 整形外科専門医)

参考文献

  • Dumoulin C, Cacciari LP, Hay-Smith EJC. Pelvic floor muscle training versus no treatment for urinary incontinence in women. *Cochrane Database of Systematic Reviews*. 2018. https://doi.org/10.1002/14651858.CD005654.pub4
  • 日本泌尿器科学会「尿失禁(一般向け)」 https://www.urol.or.jp/public/symptom/04.html
  • Hao J, et al. Alternative exercises for stress urinary incontinence in women: systematic review and meta-analysis. *International Urogynecology Journal*. 2025. https://doi.org/10.1007/s00192-025-06445-y
  • Gonzaga S, et al. *International Urogynecology Journal*. 2024. https://doi.org/10.1007/s00192-023-05712-0
  • Dimli BO, et al. *European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology*. 2024. https://doi.org/10.1016/j.ejogrb.2024.07.033
  • Ruchat SM, et al. Exercise and low back and pelvic girdle pain in the postpartum period. *British Journal of Sports Medicine*. 2025. https://doi.org/10.1136/bjsports-2024-108488
  • Bergström C, et al. Pregnancy-related low back pain and pelvic girdle pain approximately 12 years later. *BMC Musculoskeletal Disorders*. 2017. https://doi.org/10.1186/s12891-017-1760-5
  • Critchley D. Instructing pelvic floor contraction facilitates transversus abdominis thickness increase. *Physiotherapy Research International*. 2002. https://doi.org/10.1002/pri.243
  • Daneau C, et al. Association between pregnancy-related hormones and lumbopelvic pain. *Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics*. 2021. https://doi.org/10.1016/j.jmpt.2021.10.001
  • American College of Obstetricians and Gynecologists. Exercise After Pregnancy. https://www.acog.org/womens-health/faqs/exercise-after-pregnancy

※効果や身体の変化には個人差があります。
※強い痛み・出血・発熱などの症状がある場合は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。

最終更新日: 2026年7月16日

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